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問題児(狭義)のとらえ方
2002/10/21 第2回
(1) いわゆる問題児とは
知的障害児、盲児、ろう児、肢体不自由児などを除き、情意的欠陥や性格の異常または、環境に問題があることに
示される問題をもつ児童をいう。
(2) 問題の成立
同じ行動の事実について、あるもの(人)は問題とし、あるもの(人)は問題にしない。ある子どもの、あるとき
の、ある行動や、その成果を、だれかが「問題」として取り上げる人がいて、はじめて問題となる。事実がそこに
あるだけでは問題とはならない。そこで子どもの、どんな行動の事実を、だれが、どんな立場で取り上げたのか、
それを取り上げた人との関係を十分吟味してかかる必要がある。
(3) 教師の考える問題行動
Wickman, E.K(アメリカ)の研究・・・子どもの行動と教師の態度について、児童生徒の示す態度や行動のうち、
教師はどのようなものを問題であると考えているかーーーということについて研究し、それを精神衛生専門家(精
神科医師、臨床心理学者等=カウンセラー)が問題であると見る態度や行動と比較した。
(教師) 1位 盗み (カウンセラーの答え:13位/50位中)
2位 異性との性行為(25位)
3位 オナニー・自慰(41位)・・・カウンセラーは特に問題にしていない
4位 Hな写真や会話等(28位)
5位 不誠実(23位)
(精神衛生家)=カウンセラー
1位 非社交性(友達とうまく付き合えない)
2位 猜疑心が強い(疑い深い)
3位 抑うつ的
4位 短気、キレル(突発的に怒りやすい)
5位 臆病
以上のことから、何がわかるか?
→教師が問題としている中身とカウンセラーが問題としている中身の違い。
教師は、子どもが学校の決まりを守るか、先生に従うか、よく勉強するかを見るが、カウンセラーは心の解放
(自由)を目的とする。
(4) 問題行動をどうとらえるか
B=f(P・E)
レビンは、(問題)行動(B)は、一人一人の性格(P)と環境(E)の関数(f)であるととらえ上記の式
で表した子ども自信の欲求のあり方や行動傾向などの主体的条件と、子どものおかれている心理学的な環境条件
との相互作用によって規定されるとした。
したがって、私たちは、問題行動を考える場合、ただいたずらに子ども達に、問題児とか非行少年とかいうレ
ッテルをはらず、子どもたちがどのような環境にいて、いかなる欲求をそのとき持っていたか、またその子の性
格は、いかなるもので、それがどのような役割を演じたか、周囲の人との人間関係は、どうだったのか等を多面
的・組織的に検討していく必要がある。
1)性格(P)から問題をみるときの観点
子どもの情緒が安定しているか、不安定であるか。社会との対応が適応しているかどうか、向性が内向か外向か
などを中心に、それらと問題とのかかわりをみていく。
2)環境(E)から問題をみるときの観点
ア 家庭環境
< 親の養育態度とそれから生じやすい子どもの性格特性をみる >
・ 拒否的態度・・・あらゆる反社会的(万引き等のルール違反)・非社会的(他人に迷惑をかける)な行動が出やすい。
・ 支配的態度・・・裏表のある子どもになる(自発性がない)
・ 保護的態度・・・依存的・幼児的な子どもになる
・ 服従的態度・・・自己中心的な子どもになる
・ 矛盾的態度・・・疑い深い・不安症状が出る。判断力も乏しくなる。
つまるところ、〜過ぎはダメ!ってこと。
< 親子関係のダイナミックス >
・ 権威の序列、同胞数と位置など家族内の人間関係を見る。
権威の序列とは、誰が家庭内で一番権威をもっているか。
☆割と父が権威を持っている家は、男の子なら人間性が大きく育ち、女の子も、お父さんのようなパートナーを選ぶ。
☆母が権威を持っている家は、男の子なら人間性が小さく育ち、女の子もお母さんのようになる。
☆お母さんが権威を持っていてもいいので、子どもの前ではお父さんを立てるようにすると、子どもはちゃんと育つ。
イ 学校環境
< 教師が陥りやすいゆがみに留意して、子どもの多様な可能性を広い視野でとらえる。>
・ ステレオタイプ化・・・単純化。感情的に根づけられた思い込み。レッテルをはる。
・ 初頭効果・・・第一印象
・ 背光効果・・・ハローエフェクト。(例)姉が優秀だったから妹も優秀に違いない。みたいな
・ 寛容効果・・・好意を持っている子にはすべての面に好意をもってしまう。えこひいき。
・ 対比効果・・・自分の持っている傾向や特性を基準にして他の人を判断する。
< 交友関係 >
この点が障害になって、問題が生ずる原因になりやすい。