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現在のデータベース事情:マルチメディア・データベースからインターネット・データベースまで
【2000.07.14 1限 第13回】
今回の主な参照箇所:文献[3]のP.231-241、この他、
[5]上林弥彦:『巨大データの世界』、共立出版
も参照した。
マルチメディア・データベース
- マルチメディア:従来のデータベースで扱っていたテキスト(文書)や数値データの他に、音声、静止画、動画などまでも扱うデータベース。
- ex)カラオケ、電子百科事典(鳥を検索すると、鳥の写真や鳴き声が出るものもある。)、VOD(Video On Demand)、放送番組データベースetc...。
- DBMS自体の構成を変更する必要が生じる。その理由:
- データの表現形式が異なる。
- 入出力方式がメディアごとに異なる。
- データ量が相対的に大きい。
- データ自身がセマンティクスを持たないことが多く、検索がテキストのように容易ではない。
- 上記3.に対する対策としてデータ圧縮があるが、そこでは当然、圧縮、解凍機能を用意しておく必要がある。
- 圧縮形式、ファイル形式は種種あるので、それらに対する対応も必要になる。
- 音声、動画など、リアルタイム再生に対する対応も必要になる:
- マルチユーザのマシンで、何人使っているかによって動画や音声の再生スピードが変化するようでは困る。
- 通常は、専用のチップを使って処理速度を上げて余裕を持たせることによって速度を確保する事が多い。
情報検索システム
- 昔からあった図書のデータベースのみならず、新聞記事データベース、WWWのサーチエンジンなど。
- キーワード検索で、文字列のパターンマッチングにより完全一致の他に前方一致、後方一致などが使われる。
- 適合度の高い順に出力する、日付の新しい順に出力する、等の工夫によって、ヒット件数が過剰な場合の便宜をはかることが多い。
- 対象世界のモデル化、概念モデリングなどのステップを経ず、単純に文字列のヒットのみが注目される点に特徴があり、専門家の間では「データベースシステム」というより、「情報検索システム」と呼ばれることの方が多い。
- データの生成者と利用者が完全に分離することも相まって、狭義には、データベースシステムから除外されることもある。
トランザクション・システム
- データベースシステムの中で、特にデータの変更をシステムに早く反映しなければならないものを、「トランザクション・システム」と呼ぶことがある。
- ex)銀行のシステム、座席予約システム、クレジットカード検査システムなど。
知識ベースシステム
- 知識処理とデータを結びつけたもの。
- ex)エキスパートシステム。
- 他にも単純な例で、例えば
「ペンギンとヤンバルクイナ以外の鳥はすべて飛べる」・・・(*)
という事実を表現するために、すべての鳥について、「飛べる/飛べない」という属性を持たせるより、(*)をルールとしてもって、「鳥」テーブルを管理した方が効率が良いが、このように知識を蓄えるデータベース・システムは一般的に「知識ベースシステム」と呼ばれる。
統計データベース
- 個々のロウデータよりも、そこから抽出される統計量の方が興味の中心となるデータベース。
- ex)国勢調査など
- 最近では、統計量に加え、データ間の相関関係から知識を抽出する「知識発見(knowledge discovery)」、「データマイニング」などがデータベース領域のホットな話題となっている。
- ex1)「パンを買う客は牛乳を買うことが多い」という知識が発見されると、安売りセールをするときに、パンか牛乳の一方を安くするだけで集客できる。
- ex2)遺伝子配列と人間の性質に関する相関関係の発見。
能動データベース(Active Database)
- データベース内部の状態や外部の状況によって、システム自らが対応する処理を選んで実行するもの。
- 応用分野の例:航空管制、プロセス制御、システム障害検査、通信網管理、病院の患者モニターシステム、共同作業支援。
※「グループウェア」は、最近の流行の一つ。
- 能動データベースに対して、通常のデータベースは受動データベースと呼ばれる。(∵外部からの指示に従って対応する処理を行う)
- ex)残っている品数がある決められた数値以下になると、自動的に発注が行われるシステム。
並列データベースシステム
- マルチプロセッサにより、処理効率や信頼性を高める。
- データ処理の負荷が大きい場合に有効。
- 投機的検索の導入にも適している。
モバイル・データベース
- モバイル端末で利用するデータベース。
- 制限されたハードウェア仕様の中でいかに情報の引き出しを行うかということに技術論が生じる。
インターネット・データベース/Webデータベース
- インターネット/WWWを通じてデータベースアクセスする。
- スタンドアローンでないことに加え、利用者を無限に広げられること、インターフェースがWebブラウザ・レベルに単純化される点に特徴がある。
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