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【情報環境論】

【2003/12/8】【第9回】



本日の講義内容 


グループ作業におけるグループダイナミクス(2)



共同作業におけるグループダイナミクス


*前回のマイクロ--マクロモデルを思い出して比較してください*

○機械的集約モデル
単純な結論の評価だけでなく、理論だてた評価をしよう!ということで、
 機械的集約モデルが提案される
・機械的集約モデルでは、マイクロ--マクロモデルにみられるような、
 創発的変換メカニズム(予測できないマッジクのようなもの)は存在
 しないとして考える。
メンバーそれぞれが独立して課題を遂行し、一人でも正解を出せれば
 それを集団解とする。正解したメンバーがいない場合、グループは問題を
 解けない
というモデルである。
・マイクロ--マクロモデルよりは単純なモデルである。
しかし、共同作業において問題解決が行われる確率を論理的に評価する
 ことができる。


そこで機械的集約モデルを用いて、”グループ VS 個人”ではどちらが問題
解決に優れているか、これまで様々な実験が行われてきました↓↓

○グループが解決可能な確率○
個人の正解率 pi(1 <= i <= N)
グループのサイズN
・グループの解答率 P = 1-(1-p1)(1-p2)...(1-pN)
           = 1-(1-p以外)・N乗
 
(正答者:誤答者数)グループの解答
(5, 0) 1.0 0
(4, 1) 1.0 0
(3, 2) 0.96 0.04
(2, 3) 0.92 0.08
(1, 4) 0.73 0.27
(0, 5) 0.08 0.92


○結果○
・この結果(予測値)を用いて、マイクロ--マクロモデルなどを評価しなおすと、グ
 ループの正答率は個人を下回るか同一であった! (・初期正解者が1人の場合、グループ全体として誤答する場合もある)
・個人よりもグループでのほうが解決可能である確率が高いとするマイクロ--マクロ
 モデルの評価は、統計的に棄却される ・つまり、創発的変換モデル(マジック)は存在しないことが証明された!

しかし...例外もある▽
例外的条件(Miyake, 1993)
 認知過程の中に次のステップがあること
1.共同状況が作業メンバーそれぞれの思考プロセスの明示的外化
  を促進している。
※下線部⇒自分の考える過程を何らかの形で、みんながわかるように表現すること
2.上記が参加メンバそれぞれに、外化された内容の意識的な再吟味を許容する
3.上記はついで、批判的な視点や考え方の生成を導き、より深い理解につなが
  ることがある


ここからいえることは...

グループによる意思決定                

  理論の正しさが論理的に証明できない


『完全に理論的、理性的な意思決定は存在しない』

社会的(認知的)バイアス (横やり、横にそれる力)


◆バイアスの例
1.集団極化現象
  ・グループの決定は個人の初期選考で優性だった傾向を、より極端にした内容になりやすい
  ・リスキーシフト、コーシャスシフトという呼び方もある

1.ステレオタイプ
  ・文化・社会的背景や経験を同一にする人の間で共用される固定的価値観

3.適応機制
  ・問題ストレスに対応するための心理的防衛手段(ex. 合理化, 投射, 反動形成
   (複雑かつ深刻であればあるほど、バイアスがかかる)

4.斉(さい)一性の圧力
*グループがグループであろうとする力
  ・自己検閲(自分がグループの一員として行動・発言をしているかなど)
  ・満場一致の幻想
  ・同調の強要


・上の4つを和らげる役割があれば、それはグループウェアとして、
 有効であるといえる。


☆★来週はコミュニケーションについて学習します☆★



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ツボ・ライン

担当者: 及川美紀