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受容と要求の実践的統一
2002/11/18 第5回
父親の役割と母親の役割
(1)母性原理
わが子であれば、すべてのものを、良きにつけ、悪しきにつけ、包み込んでしまい、そこではすべてのものが絶対的な平等性
をもつ。
(2)父性原理
社会規範の視点から各人を評価、選別し、社会規範に違反すれば、断固とした祭壇を下すことである。
(3)父性原理・母性原理に内在する二つの面
◇母性原理: 包含する機能「わが子であれば、すべて良い子」
・子どもがどんなに間違ったことをしても、決して見放すことなく、かわいがり続け、かまい続ける母親の態度。
・子どもが勝手に母親の膝下を離れることを許さない。常に母親の膝下に置いておこうとする。
◇父性原理: 切断する機能「良い子だけが、わが子」
・まず、強いもの、正しいものを作り上げていくという建設的な面を持っている。
・だが、もし測定・評価・裁断の力が強すぎると、子どもを破壊させる側面ともなる。
(4)子どもの精神病理は両者のアンバランス
子どもの精神病理の多くは、この父性原理と母性原理とのアンバランスから生じると言われている。
『不登校や家庭内暴力は両者の不均衡から生ずる』(河合隼雄氏)
不登校児…母親の過保護、つまり母性原理の否定面が色濃く表れており、その上に父性原理が欠如している
母親のどこまでも見捨てることのない愛情と、父親の厳しい要求があってはじめて子どもが成長していく。
教師のリーダーシップ研究におけるAD理論の位置
集団を指導するとは、集団の機能を効果的に実現しようとする集団への働きかけである。集団機能がうまく実現すれば、リーダーの指導は成功したことになるし、実現しなければ指導は失敗したことになる。集団機能は大きく二つの次元に区別される。
1. PM理論からみた教師のリーダーシップ
(1)P機能(Performance)…集団の目標達成の機能
(2)M機能(Maintenance)…集団維持機能
◇リーダーは、
集団の課題を達成するように集団成員に働きかけていく(厳しい指導姿勢)と、
集団成員が連帯感に結ばれ協力し合っていける(集団成員を受け入れていくやさしい指導姿勢)ように
働きかけていかねばならない。
◇P機能の大小、M機能の大小の二つの視点からリーダーシップを類型化し、PM型,Pm型,pM型,pm型の四種類を設定。
集団のリーダーとして最も望ましい類型は、PM型のリーダーである。
2. HS理論からみた教師のリーダーシップ
(1)H機能(Human)…… 人間担任機能
(2)S機能(Subject)… 教科担任機能
◇教師のリーダーシップ類型は、HS型,Hs型、hS型、hs型である。
◇日本の教師にはhS型が多い。しかし、教師の理想は、あくまでもHS型である。
3. AD理論からみた教師のリーダーシップ
(1)A機能(Acceptance)… 受容
(2)D機能(Demand)……… 要求
◇教師のリーダーシップは、AD型、Ad型、aD型、ad型の4種類に類型化。
◇一番望ましいのはAD型。ついでAd型。aD型、ad型は望ましくない。
◯学習意欲の高い子どもは、AD型の学級担任に受け持ってもらっている学級の子供に多く、反対に学習意欲の低い子供は、
ad型、aD型の教師の学級に多く見られた。
◯規律の問題にしても中学生で喫煙する子どもは、ad型、aD型教師の学級に多く、AD型、Ad型の教師の下では少なく
なっている。特に対教師暴言などは、AD型、Ad型に少なく、aD型、ad型では、極めて多くなっている。
4. 教師の理想的リーダーシップ類型
◯3つのリーダーシップ理論に共通しているもの
どの理論とも、個人を越えた集団に顔を向けていると同時に、集団成員にも顔を向けている。
個人を越えた集団に顔を向けることを、それぞれ、P機能、S機能、D機能と呼んでいるが、それらは同時に集団成員に
顔を向けるM機能、H機能、A機能と対を成している。
◯集団のリーダーとしての教師は、集団成員の一人ひとりを、まず受容することから始めなければならない。
(1)一人ひとりの子どもを「かけがえのない子ども」とどこまでも関与し、無条件にかまい続け、決して見放さないこと。
(2)集団成員の子どもの言い分に耳を傾け、必然性を理解してやる態度が必要。
(3)集団成員の子ども達と師弟同行関係を結ぶこと。決して子どもとの関係を権力ー命令ー服従関係にしてはならない。
◯まとめ
集団成員の一人一人を受容するとは、「同志関係をきり結び」「子どもを共感的に理解し」「無条件的・積極的に配慮」する
ことである。