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受容主義の生徒指導と健全な人格形成
2002/11/11 第4回
I 受容主義の生徒指導と健全な人格形成
1. カウンセリングマインドとは何か?
◎カウンセリングマインドとは…クライエントと接する時の精神態度のようなもの
◎ロジャース:カウンセリングの課程に何が必要か、必要十分条件は何かを問題提起した心理学者
<カウンセリングの課程に何が必要か?必要十分条件は何か?>
カウンセラーの学識、造詣の深さが重要な役割を果たす。また面接技術、面接方法も重要である。
さらにカウンセラーの価値観やイデオロギーも大切である。…どれも大切。(教P26〜27)
だが、それら以上に重要なものは、クライエントに対する受容であり受容的な態度である。
カウンセラーのクライエントに対する(受容的態度)こそカウンセリングの決め手であり、必要十
分条件である。受容、受容的態度は、カウンセリングにとって最も重要なもの、カウンセリングの
決め手であることから、(受容または受容的態度)のことをカウンセリングマインドと呼びたい。
◎受容とは何か?
ロジャースは、3つの要素があるといっている。
第一の要素は、一致である。第二の要素は、共感的理解である。第三の要素は、無条件的積極的配慮
である。この三つの要素が相互関連し合いながら一つの体系を成している。
まず第一に教師が教師としての仮面をぬいで自分の本当の姿・人間教師として子どもに接すること
である。教師が一致している時に子どもとの間に人間関係が成立する。そしてこの出会い関係の中で、
第二の要素である共感的理解が可能となるのである。
共感的理解とは、子どもなりの行動の論理、子どもなりの行動の枠組みに即して、その行動を理解
することである。内在的理解とも言われる。
教師が自分の論理や枠組みで子どもを理解するのは外在的理解と言われる。外在的理解は、ともす
ると評価的理解(レッテルをはったり、そういう目でみがち)となる。
無条件的積極的配慮とは、成績が良かろうが悪かろうが関係なく、ほかならぬお前だから構い続け
るということである。(教P28)成績が良かったら誉める、悪かったら叱るというのは「条件付きの
積極的配慮」
2. 受容は何をもたらすか(教P29〜32)
(1)学習意欲が自然発生し学習活動が活性化する。
教師から受容されていると認知する子どもは、学校生活そのものが楽しくなり、生活意欲が自然発生し、
生活意欲に裏打ちされた学習意欲が旺盛になってくる。
(2)子どもが情緒的に落ち着いてくる。
子どもは、教師から理解され受け入れられていると認知すると自分自身を理解し受け入れるようになる。
その結果子どもは、情緒的に落ち着いてくる。落ち着いてくれば、自分自身をかえり見るようになり、
自分自身が見えるようになる。そうすると、自分の持っている問題にも気付いてくるし反省するように
もなる。
(3)子どもが心を開く。
教師が子どもを受け入れていくと、教師に対して心を開き、教師の心に耳をかたむけ、素直に教師の指
導を受け入れるようになる。教師が受け入れると、子どもも教師を受け入れるようになる。相互受容が
成立する。
(4)仲間に対しても心を開いてくる。
仲間の立場にたって考えることができるようになり仲間を思いやることが出来るようになる。子ども相
互が受容し合うようになる。これは、仲間相互が競争し合い、攻撃防御し合う学級の雰囲気とは大変な
違いである。
<<事例>>教科書P30〜32「吉川君」
(5)自尊感情を持つことができるようになる。
このように、子ども一人ひとりが、教師から受け入れられ大切にされる。学級の仲間からも受け入れら
れ大切にされる。そのような自分を粗末にできない。自分自身を受け入れ大切にする。健全な人格にと
ってもっとも大切にする。健全な人格にとってもっとも大切と言われる自尊感情も成立してくる。自分
自身に誇りをもつことができるようになる。
受容してやれば、健全な人格が形成されるのである。
II 子どもの人格形成に生きる励まし方
1. 母親の励まし方と自己概念形成
自信を持って行動できるかどうか、やるきがあるかどうかは、その人間のもっている自己概念によって決ま
る。子どもの人格形成にとっても、自己概念形成にも重要な役割を果たすものは、父親、母親、教師などがあ
る。父母がわが子に対して受容的な肯定的な態度をとるか、拒否的な態度をとるかで子どもの自己概念は、決
定的な影響を受ける。
特に、乳幼児期に母親から受容体験を与えられていないと、子どもは壊滅的な外傷経験を与えられる。その
時期の子どもにとって母親は、世界のすべてであり、その母親から冷たくされることは、世界のすべてから冷
たく処遇されることであり、そのことは自己バイ小的な自己概念を形成し、自己に対する信頼感、自信を奪い
取ってしまう。
乳幼児期に、自己に対する(信頼感)、(自信)を獲得していないと、児童期や青年期になって自信がない
ので、周囲に対して積極的に働きかけることが出来ず、その結果、豊かな自然体験、生活体験、社会体験を持
つことができない。
2.教師の励まし方と子どもの自己概念形成
子どもが小学校に入学すると、教師が子どもの人格形成にとっての重要他者となる。
父母と違って教師は、子どもがこれから仲間入りする社会の代表者で、子どもの将来への人格形成上の影響
力には、計り知れない者がある。
<<事例>>教科書p34〜35「ピグマリオン効果」
3.教師の励ましによる自信とやる気
教師が子どもを励ます場合には、目的をもって、一貫して行わなければならない。子どもに自信を与え、やる
気を起こさせる。そういう目的展望をもって励まして行く。
★励まし方★
原則1:よい行動やよい点を具体的に誉める。
原則2:少しでも進歩したら、それを認めていく。勉強でも運動でも、努力しているところを認める。細
かな進歩でも、見落とさずに認めていく。
そのためには、教師が子どもに対して愛情をもち、子どもに心くばりをしていることが何よりも必要なことと
される。子どもの生活や行動の上の小さな、細かな変化を見落とさないために、教師はまず子どもに対する関与、
心配り、配慮が必要である。
<<事例>>子どもが間違ったことをした時の教師の態度。教科書P36
4.仲間相互の認め合い(教P37)
子どもにとって友達に認められることは、大変な励みになる。相互に認め合うようにしてやることは、重要な
ことである。
しかし、子どもが友達を認める場合、そこには自己本位的なものがあることを払拭することはどうしても出来
ない。自己本位的に自分に対して何かをやってくれたから誉めるといった側面をぬぐ
い去ることは出来ない。子どもとしては当然のことである。
しかし、教師には、そのようなことはあってはならない。教師としては、子どもにも、親にも見えないところ
を認めていく必要がある。社会的な価値の実現の視点から、伸ばすべきところを誉めていく必要がある。社会的
な価値の実現の視点から、伸ばすべき所を誉めていく必要がある。教師も子どもと同じ様に自分の都合の良いこ
とを誉める傾向があるので留意しなければならない。
子どもを励ます場合に、教師がやらなければならないもう一つのことは、友達も認めていることを知らせてや
ることである。子どもは、友達からも認められることを欲している。学年が進むほど友達から認められることを
願っている。そこで教師は、積極的に子どもと子どもをつないでいくのである。(先生方同士も同じ)
5.学級集団の励まし合い
まず教師が誉める。次いで集団が誉める。集団の承認はいっそう強い励みになる。そのようにしむけていくの
が、学級作りである。仲間からの承認は強い力になる。
<<事例>>教科書P38「太郎くん、花子さん」