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不確定性下の意志決定−決定理論−1
【2001.06.21 2限 第10回】
1.決定理論
発表者:鈴木(博)
決定理論:将来の不確定性に直面する意志決定の原理を取り扱う。
不確定性の程度
- 確定性の場合:将来起こりうる状態はただ一通りしかないという場合
- リスクの場合:将来起こりうる状態について確率分布がわかっている場合
- 不確実性の場合:将来起こりうる状態について確率分布がわかっていない場合
確定性の場合には、将来起こりうる状態はただ一つなので、最大利益(もしくは費用最小)の行動案を選択すれば解決出来る。
○リスクの場合の意志決定原理
例)
2つの株式X,Yがあり、どちらかに投資するとする。これら2つの株式の売買益は、共に経済成長に依存する。来年予想される経済成長の3つの場合についてそれぞれの株式の売買益は以下の通りである。
経済成長→ ↓行動案 |
S1 高い |
S2 変わらない |
S3 低い |
A1:Xに投資 |
120(円) |
102(円) |
80(円) |
A2:Yに投資 |
108 |
106 |
104 |
1.期待値原理
期待値原理:行動案の利益(または費用)の期待値を計算し、これが最大(または最小)になるような行動案を選択するもの。
例において、それぞれの確率が左から0.5,0.25,0.25だとすると、行動案A1,A2の期待値をE(A1),E(A2)とすれば
E(A1)=120円*0.5+102円*0.25+80円*0.25=105.5円
E(A2)=108円*0.5+106円*0.25+104円*0.25=106.5円
となり、Yに投資するほう、すなわち行動案A2が有利である。
2.最ゆう未来原理
最ゆう未来原理:将来起こりうる状態の内、最も起こる可能性の大きい状態にだけ注目し、その状態の元での最大利益(または費用最小)である行動案を選択するもの。
例において、それぞれの確率が左から05.,0.25,0.25だとすると、一番高い確率の部分を注目すると、Sの列となり、その列での最大売却益を与える行動案A1が選ばれる。
○不確実性の場合の意志決定原理
1.ラプラスの原理
ラプラスの原理:将来起こりうる状態について全く確率がわからない場合に、すべての状態が同じ確率を持っていると考えるもの。
前の例では、
P(S1)=P(S2)=P(S3)=1/3
と考えられるわけであり、
E(A1)=120*1/3+102*1/3+80*1/3=100.67円
E(A2)=108*1/3+106*1/3+104*1/3=106.00円
となり、行動案A2が選択される
2.マクシミン原理またはミニマックス原理
各行動案について最悪の状態が起こった場合を想定し、その場合の利益(または費用)を最大(または最小)にするような行動案を選択するもの。
最小利益を最大にするのがマクシミン原理、最大費用を最小にするものがミニマックス原理である。
行動案A1をとった場合の最小利益= 80円
行動案A2を取った場合の最小利益=104円
であるから、マクシミン原理により、行動案A2が選択される。
3.マクシマックス原理またはミニミン原理
各行動案について最善の状態が起こった場合を想定し、その場合の利益(または費用)を最大(または最小)にするような行動案を選択するもの。
最大利益を最大にするものがマクシマックス原理であり、最小費用を最小にするものがミニミン原理である。
例では、
行動案A1を取った場合の最大利益=120円
行動案A2を取った場合の最大利益=108円
であるから、マクシマックス原理により、行動案A1が選択される。
4.ミニマックス・リグレット原理
リグレット:実現した状態のもとでの最善の行動案を実行しなかった時の利益(費用)の差のこと。
リグレットの計算方法
リグレット=最善の行動案を取った場合のの利益(最大利益)−実際に取った行動案の場合の利益
または
リグレット=実際に取った行動案の場合の費用−最善の行動案をとった場合の費用(最小費用)
これを計算し、リグレット表を作成する。
リグレット表
|
S1 |
S2 |
S3 |
A1 |
0 |
4 |
24 |
A2 |
12 |
0 |
0 |
このようにして作成されたリグレット表にミニマックス原理を適用する。
例では、
行動案A1の最大リグレット=24
行動案A2の最大リグレット=12
であるから、行動案A2が選択される。
まとめ
それぞれの意志決定原理にはそれぞれ説得力を持っており、どんな場合にも必ず取らなければならないというものはない。
意志決定原理の選択は、意志決定者の考え方による。
課題1
発表者:来内
1.歩き行では、来期の生産計画について、次の3つの行動案を考えている。
A1:前期より10%増産する
A2:前期と同じ生産量にする
A3:前期より10%減産する
これに対して、来期の経済状況としては、次の3つが考えられる
S1:前期より好転する
S2:現状維持である
S3:前期より悪化する
以上の行動案および経済状況に対して、次のような利益表が作成されたとする
経済状況→ ↓行動案 |
S1 (好転) |
S2 (現状維持) |
S3 (悪化) |
A1:前期より10%増産 |
700万円 |
400万円 |
250万円 |
A2:前期と同じ生産量 |
600 |
500 |
400 |
A3:前期より10%減産 |
350 |
400 |
450 |
S1,S2,S3の起こる確率がそれぞれ0.5,0.3,0.2だとする。
期待値原理によれば、どの行動案が選択されるか。
2.問題1において、最ゆう未来原理によれば、どの行動案が選択されるか。
3.問題1において、ラプラスの原理によれば、どの行動案が選択されるか。
4.問題1において、マクシミン原理によれば、どの行動案が選択されるか。
5.問題1において、マクシマックス原理によれば、どの行動案が選択されるか。
6.問題1において、ミニマックス・リグレット原理によれば、どの行動案が選択されるか
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