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第9回 相談の実際@:友人関係と「いじめ」

8/1/2003
連載第9回


【今日の授業内容】


1.「いじめ」の実態:
.「いじめ」をどのように定義するかによって、あるいは調査の仕方によってその数字は変化してくる。森田らの調査では、小5〜中3で「いじめ」被害経験13.9%、加害17.0%となっているが、 もっと高い数字を出している調査もある。
・「いじめ」の被害と加害は紙一重であり、同時に被害と加吉を経験している場合もある。仲の良い友だちから「いじめ」られ続けているような場合もある。
・森田(1994)は「いじめ」の四層構造論を提唱している。つまり、「いじめ」の関係者は、当の被害者と加害者だけではなく、裾野は広いと考えておいた方が良い。


2.「いじめ」の発見と相談:(森田らの調査から)
・以下は森田らかの調査から明らかになったことである(平成9年)。
  ・被害者が「いじめ」について話す相手は、友だち、保護者、担任の順である。ただし、誰にも話さなかったという人も4割ある。
  ・被害者が「いじめ」を止めてほしいと思う相手は一に友だち、二は担任である。
  ・被害者が「いじめ」について知られたくない相手としては、保護者、兄弟姉妹が多い。
  ・教師がみつけにくいのは「無視したり仲間はずれにする」タイプの「いじめ」である。
  ・加害者のうち教師から指導を受けたとする者は3割以下である。
  ・「いじめ」に対応しさえすれば、効果はあると受け止められている。→図4
・学級担任は被害者から「いじめ」への対応を期待されているが、担任がそれを発見できない場合も少なくないし、被害者が相談をためらう場合も多い。被害者も加害者もそれぞれ被害や加害 を否定する場合すらある。また、担任が対応策に困っているのも事実である。しかし、何らかの対応することは有効であると受け止められている。


3.「いじめ」への対応の基本的な考え方:
.「いじめ」は「絶対に」あってはならない、という硬直した思考は有害である。「いじめ」なの ではないかという疑いをもって人間関係をみていくと、学校の雰囲気に緊張感が生まれてしまうだろう。ただし、「いじめ」を深刻化させない工夫必要であろう。
・「いじめ」が発生してからの対応と、それが発生しないような予防的対応がある。後者はグループアプローチが有効であろう。
・学校では「いじめ」の実態調査が行われることが多い。「実態把握→原因追及(悪者さがし)→ 対策」という図式にのっとっているが、被害者が「いじめ」を訴える窓口の一つというくらいに 考えておいた方が良い。これで「いじめ」が発見されなければ「いじめ」が存在しない、とは言えないし、「悪者」をつきとめて叱責すればそれで解決とはいかない。
・「いじめ」が止まることだけが「いじめ」問題の解決なのだと決めつけてしまわないことが肝要。
 「いじめ」は相変わらずあっても、問題は改善していくことがある。
・「いしめ」は四層構造論から明らかなように裾野の広い問題である。被害者に対するケアだけで
なく、加害者に対するケア、クラス全体に対する対応が必要な場合が少なくない。人間関係のも
ちかた一般に関係しており、学級の雰囲気、学校生活、学業の状況なども関係していると考えら
れる。この意味でも裾野は広いが、そのことは逆に、「いしめ」へのアプローチはさまざまに考え
うることも示している。



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