ハードウェア基礎 2002年度版テキスト




4.スイッチ

4.1.スイッチとは

スイッチ(switch)とは元来は”切り替える”という意味であるが、電気電子回路では、 回路のON/OFF素子のことをいう。実用しているスイッチ素子は、目的に応じて

・手動スイッチ 数個/パソコン1台 人手による電源ON/OFF他
・電磁リレー 0〜1個/パソコン1台 遠隔自動による電源のON/OFF
・トランジスタスイッチ 1000万個近く/パソコン1台 デジタル信号の伝達他

の3種類がある。スイッチの機能は回路のON/OFFを行うことであるが、その指示信号を受け取る 必要がある。手動スイッチは任g年の指の力が指示になる。電磁リレーとトランジスタでは外部から の微小な入力電流(または電圧)が指示信号となり、大きな電流のON/OFFを行う。



図4.1 各種スイッチ


トグルスイッチとリレー接点の場合は、OFFからONになった瞬間のごく短い時間 (約0.1sec)に接点が跳ね返ってバウンドする現象がある。これはあたかも何回かON /OFFを繰り返したかのような現象になるので、これらのスイッチを高速の論理回路 の情報として使うときは、これを論理的に回避する設計を行う。(1回だけカウントするように チャタリング回避する。)


4.2.トランジスタスイッチ

トランジスタスイッチの最も基本的な回路を4.2図に示す(実用回路はもう少し複雑)。 トランジスタスイッチはコンピュータ内部の論理回路に使われ、論理信号(5v,0v) の伝達を行う。入力端子に”1”信号(=5v、正確には3,5v〜5,0v)が加わる とトランジスタにベース電流が十分に流れ、それによってコレクタ電流もながれる。 すなわちスイッチ=ON(コレクタ電流はベース電流の20倍程度まで流れ得る)
入力端子に”0”信号(=0v、正確には0〜0,3v)が加わるとベース電流は流れず (0,7vを越えないと流れない)従ってコレクタ電流も流れない。すなわちスイッチ= OFF。

ONのときの出力端子の電圧=Ov(正確には約0,2v) すなわち論理”0”
(入力と逆の出力)
OFFのときの出力端子の電圧=5v(正確には流出する出力電流で変わる) すなわち論理”1”
(入力と逆の出力)



図4.2 トランジスタスイッチ回路

4.2図の入力信号と出力信号との対応を整理して4.1表に示す。

入力電圧 入力信号 トランジスタスイッチ 出力電圧 出力信号
3.5〜5.0v
0〜0.3v
”1”
”0”
ON
OFF
0.2v
5.0v-α
”0”
”1”

4.1表:4.2図のトランジスタスイッチの入力出力対応

この表から判るように、このトランジスタスイッチはインバータ/NOT回路となっている。


4.3.トランジスタスイッチの特徴

トランジスタスイッチがON/OFFする速度は電子Tの移動の速度(=電流の速度※)だから、 他の機械動作を伴うスイッチに比べると非常に早い。

ここでいう速度とは進行波すなわち波の波頭が進む速度である。その速度は実は その電流が何の上を流れているかによって変わる。真空空間の中の非常に太い銅線 を進む時は、限りなく光の速度に近い。(300000km/c = 地球7.5周/s = 30cm/1ns) しかしプリント配線基盤の上を進む時はこの3分の1程度に低下する。 周囲の絶縁体に僅かな帯電をさせ、僅かな磁力線を発生させるために波頭の速度が 遅くなる。 トランジスタの中を進む時は、距離的空間的な負担は無いが,接合面に帯電が発生 したり消滅したりするのに僅かな時間を要する。そのため現在のトランジスタスイッチの ON/OFF切り替え速度は0.1ns程度である。

トランジスタスイッチの速度と物理的な大きさをまとめて他のスイッチと比較すると 下表となる。この圧倒的な差がエレクトロニクス技術を発達せしめた原動力である。

  速度
1秒間に何回スイッチできるか
物理的な大きさ
1*1cmのスペースに何個入るか
手動スイッチ
電磁リレー
トランジスタスイッチ
1〜2/s
10/S
100億/s
1個
0,1個
1000万個

4.2表:各種スイッチの比較(極めて概略の数値)