10/4  10:30 - 12:00

作成・文責 並河岳史


10/26 一部修正

はじめに

 ロシア語とロシア事情は火曜・水曜・金曜の3コマに分かれており、学生はそのどれかを選択して履修することになります。
 中途半端に言語をやっても使えるようにはならない、週に一回の講義ではよほど集中してやらなければだめだ、という黒岩先生の考えから、火曜と水曜のクラスでは言語はやっていません。火曜と水曜のクラスではロシア事情だけを教えて、金曜の1限のクラスだけ自宅学習などを課して集中的にロシア語を教えています。前期に金曜のクラスに履修登録したのは4名。最後まで続いたのは2名。その2人には「やったかいがあった」と言えるぐらいの結果が出たそうです。
 このページの筆者(並河)が履修するのは水曜日のクラスです。ロシア語とロシア事情の中では最も受講者が多く、約30名が履修登録しています。このページもロシア事情に関する内容になります。

 黒岩先生の授業は、教科書を使わずに時事のニュースの話題を交えながら進むので、それらの内容もここに書いていくつもりです。
原潜クルスクの話


 ロシアの原子力潜水艦クルスクがバレンツ海で沈没した事故を覚えているだろうか。原子炉の放射能漏れが心配だとか、乗組員が無事かもしれないのにロシア海軍はノルウェー側の救助活動の申し出を断ったとか、そういう報道がされた事件だった。
 学生の何名かが発言したが、その誰もがロシア当局に対して悪い印象を持ったようだった。
 先生は「こんなことをやっているからますます(ロシアの)イメージが悪くなる」「プーチンなにやってるんだよ」というようなことを言った。ロシア研究の専門家で事情通であるということは、日本にいる時はロシアの擁護者というような立場に立たされざるをえないのかもしれない。
 ちなみにクルスクというのは軍のエリートが通う学校などがある名の知られたロシアの都市だそうです。そして、その名を与えられた原潜が沈んだことはロシア人の心に大きなショックを与えたと思われるということです。日本では自衛隊員はけっこう軽く見られていますが、外国では一般人が軍に対して強い誇りを抱いており、軍人は国や市民を守る人間として敬意を持たれています。かつて東側の頂点に立っていたロシア軍に対してロシア人は相応の誇りを持っており、その軍事力の象徴とも言える原子力潜水艦を、世界に恥をかく形で失ったことはロシア人の心をあまり好ましくない方向に傾かせただろう、という見方を黒岩先生は示しました。
 クルスクの遺体収容は10月10日に始められる予定です。

「YAHOO! ニュース」による検索


日露首脳会談と北方領土


 夏休み中のロシア関連のニュースとして、日本で報道された中では原潜クルスク事故と並ぶのがこの話題である。
 この内容についてちゃんと知っている学生は少なそうだった。そういう筆者(並河)も人のことは言えない。大学に入ってからほぼテレビを見なくなったので、ニュースをあまり知らないのだ。これらのニュースの時期は実家にいたのでかろうじていくらか発言できたが、ちょっとあぶなかった。もともとは海外製のドキュメンタリー番組とかがけっこう好きだったから、前期の授業にはそれなりについていけたけど、これからはなんとかすべきかもしれない。
 話は日露首脳会談に戻る。1997年にエリツィンと橋本竜太郎との首脳会談でなされた「2000年までに平和条約を締結する」というクラスノヤルスク合意があって、日本側としてはそれを根拠に領土問題の交渉を進めたかった。しかし、プーチンは合意の原文を参照し「2000年までに平和条約を締結を目指し全力を尽くす」と書いてあるのだから、努力目標に過ぎず達成できなくてもしかたがない、と発言した。
 筆者の世代ではあまり知られていない、というより関心を持たれていないが、日本とロシアは第二次世界大戦についてサンフランシスコ講和条約から数年遅れて講和して国交を回復したきりで、平和条約というものを結んでいない。その障害になっているのは昔も今も北方領土なのだが、あの島々が日本に帰ってくる気配はない。いつか日本とロシアの力関係が劇的に変わらない限り、ずっと今のままだろうと筆者も思う。

前期末のアンケートに対する分析と教育に関する話題


 前期末に黒岩先生は自分で作成した授業評価のアンケートを配った。その結果を彼女は公表した。
「みんなもう覚えてないって顔してるけど……」
 と言って話がはじまった。並河も例外ではなく、どういう設問があったかよく思い出せない。
 まず前期の授業についての学生の自己評価と教員(黒岩先生)に対する4段階の評価について。
 教員に対する評価は28人中、Aが20人、Bが7人、Cが1人。自己評価はAが10人ぐらいでBが大半だった。
 前期末に課された「ロシア関連の本の書評」という課題が負担だったかという設問の回答は、「負担ではなかった」が3人、「少し負担だった」が多数、「とても負担になりつらかった」が5人だった。しかし、つらかったと答えた5人の授業・教員に対する評価が辛かったわけでもなかった。なので、後期も同じような形式の課題を出すことになった。
 ところで、日本で実施している大学はまだ少数だが、学生が講師の授業を評価するというシステムがある。どちらかというと、そのほうが望ましいと彼女は語った。カリキュラムを無視して勝手な授業をする教授などがいても、従来のシステムではまかり通ってしまう。しかし、学生に評価させるということに強く反対する人達の言い分として「そんなことをしたら学生は楽をさせてくれて雑談ばかりする講師に高い評価をつけるに決まっている。真剣に教えても、課題をたくさん出せば嫌われて評価が低くなる」という意見があるらしい。しかし、黒岩さんの授業のアンケートではそういう傾向はあまり見られなかったので、「やっぱりそういう見方は学生をナメているのかな」と彼女は言った。

海上自衛隊三等海佐とロシア武官とのスパイ行為


 萩崎三等海佐が在日ロシア大使館のビクトル・ボガチョンコフ大佐に自衛隊の情報を流していた事件も、授業の話題にのぼった。
 萩崎被告は、見事に手玉に取られてしまった。
 ロシア人の大佐は選ばれた外交武官でやり手だっただろうし、自衛官の中でも弱い所を狙われたという見方もできるが、原潜クルスクの話題でも述べたように、日本の自衛隊には誇りとか国を守る責任感とか、そういうものが薄いせいで起きた事件だとも思える。もちろんそれは一般人の自衛隊に対する意識のせいでもあるのだが。
 誇りとか国とかを売り渡すには、あまりにも安い報酬で彼は情報を流してしまった。

「YAHOO! ニュース」による検索



← 次回(10/11)へ
← ロシア語とロシア事情Uの目次へ