キーワード2

ホット・メディア,クール・メディア


定義

          ホットメディアとは,単一の感覚を「高精細度」 (high definition)で拡張するメディアのことを表わす.「高精細度」とは,即ちデータを十分に満たされた状態のことである.
          一方クール・メディアは,「低精細度」(low definition)のメディアであり,それは与えられる情報量が乏しく,受容者が情報を補う必要がでてくるものである.

解説

      マクルーハンの理論では,メディアとホットとクールの2種類に大別している.マクルーハンによれば、ホット・メディアとは、単一の感覚を高精細度で拡張するメディアのことであり、ここには3つの基準が存在している。すなわち
  • 単一の感覚に働くこと
  • 高精細度であること
  • 受容者の参与度が高く、拡張されていくこと
の3つの基準が満たされているかどうかで判断される.一方クールメディアはこの対極に位置するものとして考えられている。
      具体的には,ラジオ,映画,活字などはホット・メディアとなり,テレビ,電話,談話,漫画などはクール・メディアとなる.
      例えば新聞を考えてみる.新聞は,静的な視覚をもち,記事は多方面に,詳細に書かれていることが多い.そのため,精細度は高いと考えられる.参与度に関しては,投書などによる意見で終わることが多く,記事内容に反映されることも少ないと考えられるために,比較的低いと考えられる.よってベクトル的に考えれば,新聞はホット・メディアだと考えられる.
      テレビの場合は,映像,文字,音声と言った動的な複数の間隔に働き掛け,新聞などの情報の中から重要度の高いもの,娯楽性のあるものを手短に伝えている.その為,精細度は低いと考えられる.一方参与度に関しては,収録の見学が行えたり,視聴者へのプレゼントを行う等をして,受容者の参与を高めるように工夫をしている.そのため参与度は高いと考えられ,ベクトル的に考えれば,テレビはクール・メディアであると考えられる.
      このホット,クールという分類は,メディアに対して用いられているのではなく,文化などに対しても同様に使用されている.このホット,クールという分類は,体温的なものもあり,我々が日常として使っている俗語的な意味も含まれている.特に体温,温度的であるというのは面白い考え方である.例えば,今までラジオを流す割合が大きく,国民の温度を上げてしまったので,今度はテレビの放映時間を増やすことでその温度を下げてしまおう,という使い方も可能となるという.いわば,分類されたメディアをその用途に応じて使い分ける,ということになる.
      ホットなものとクールなもの.その使われ方を改めて見直してみるのも,制作者の意図が見えかくれして面白いのではないか,と思われる.

参考文献

メディア論,M.マクルーハン,みすず書房,1987
マクルーハンの世界,竹村健一,講談社,1967
http://www.sfc.keio.ac.jp/ipu/users/yuji/media/MESS.HTM(8/11,2000)

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