定義:ネットワーク上のコミュニケーションにおいて怒りが生じる現象。
解説:フレーミングには次のような事例がある。
小規模なパソコン通信の草の根電子掲示板では、男性会員がある女性を指名して「カワイイ」と書き込んだ。この女性がたしなめると、男性は悪いのかと反論した。この一言に対して、ほかの男性会員は「お前は非常識だ」「彼女を困らせるな」という攻撃を浴びせた。書き込みでの集中攻撃は、日に20件以上に及び、非難を浴びた男性会員は一ヶ月後に脱会した。(朝日新聞、1997.9.25)
コンピュータを使ったネットワーク上では「権威勾配」が低い、すなわち、高位者と低位者との間の権威関係がフラットになったものととらえることができる。皆が同一の地位になりコミュニケーションを行った場合に近いものと考えること事が出来る。「権威勾配」のフラット化が抑制を解き放し、コミュニケーションを活発にし、「フレーミング」のような感情的な表出を伴う攻撃を引き起こすわけではない。事例で述べた草の根ネットにおいて、やり取りを画面で見ていた男性会員は次のように話していた。
「相手の困った顔が見えないし、いじめ倒すのもゲーム感覚。罪悪感もないし異様に燃えてしまう」(朝日新聞、1997.9,25)
自分自身が相手に見えないという匿名性だけでなく、攻撃を受ける対象である「相手の困った顔」が見えないということも「フレーミング」が起こる大きな要因といえる。つまり、対人場面であれば「困った顔」が見えることが攻撃の歯止めとなるが、顔も見えず声も聞こえないネットであれば歯止めがなくなることになる。攻撃の対象となる出来事が起こることが「フレーミング」の前提となるが、「権威勾配」がフラットであることが「フレーミング」を含めた自由な議論を引き起こし、相手の顔が見えないことや自分の顔が相手に見えないことが「フレーミング」を抑制できず、攻撃を集中化させてしまうことになるのだろうと思う。
参考文献: 山下利之:インターネット、マルチメディアをよむ 技術、人、社会の諸相日本出版サービス:1998
担当:曽根寛子