キーワード4:やらせ
定義:
テレビのドキュメンタリーなどで、いかにも本当らしい状況を作り出したり、演技などをさせたりすること。
解説:
NHKスペシャル「奥ヒマラヤ 禁断の王国 ムスタン」(1992年9月〜10月放送)などで、問題となったテレビ番組には常に付きまとう問題である。番組を面白くするために事実の確認をないがしろにしたり、誇張したり、過剰な演出を行うなど、製作管理体制の組織的な弛緩と倫理を逸脱した制作者の姿勢が問題となっている。
また、渡辺 武達 著『メディア・トリックの社会学──テレビは真実を伝えているか』(世界思想社 1995年)の中では次のように述べている。視聴率をとにかく稼ぐため、俗受けのためのセンセーショナル化、時間や費用の不足(キー局によるカットオフ=ピンハネも原因の一つ)のために「やらせ」やタイアップ(つまりは癒着)でもしないと番組が作れない、などがあるが、ひどいものでは世論誘導のためや政府や企業の関与又はそれらの意向を忖度した自主規制といったものが簡単な実例と共にあげられている。「やらせ」問題の抜本的解決策としては、(1)公正・中立で、税金による経営支援をも政府に勧告、実施出来るような強い力を持ち、中央の政治・経済から独立した準司法・行政組織としてのマスメディア監視組織の結成、(2)マスメディアの特性・社会的位置・誤用の危険などを学校教育において正式な授業で取りあげる、(3)メディアの自己内部点検制度の充実、の3つを挙げている。そして最後に、「市民主権の民主主義と社会の維持・向上は良質のマスメディアの存在によってのみ保障される」と強調する。
参考文献:
渡辺 武達 著『メディア・トリックの社会学──テレビは真実を伝えているか』
URL:http://jinbun1.hmt.toyama-u.ac.jp/socio/lab/koudoku/94/katoh.html
小学館 現代国語例解辞典 第2版 監修 林 巨樹 1276ページ
集英社 imidas '98 654ページ
(担当:川辺 努)