定義:
地球の周りに飛ばされている衛星から地上に向けて電波を送出し、それを利用して通信をしている電話。それゆえ端末が有線で回線に接続していることがないため、一般には「衛星携帯電話」と呼ばれる(以降、ここでは衛星電話を衛星携帯電話と呼称する)。現在その通信方式としては、静止衛星を利用した方式と低軌道衛星通信方式を利用した方式の2つがある。
解説:
現在の携帯電話は、全国で人口比率の90%以上をカバーしているが、国土面積では半分もカバーしていない。つまり携帯電話は、常に人がいるところで「使える」のであって、どんなところでも使えるわけではない。奥地での遭難や事故の連絡のためには使えないのである。
1995年1月17日に起った阪神・淡路大震災では、有線の一般加入電話・公衆電話はもちろんのこと、携帯電話でさえも、多人数の利用による回線ビジーや基地局の損壊などの理由から、全くと言っていいほど使えなくなり、被災地は都市機能が麻痺し、パニックを生んだ。
そこで注目されるのが「衛星携帯電話」である。電波を衛星とやりとりするため、衛星からの電波の届くところであれば、どこからでも通話ができる。山や海上などを含めた日本全土をカバーしている。さらに地上に設置する基地局に依存しないので、地上がどのような状況であろうと、通話自体の品質に差は出ない。
ただ、いつでもどんな人でも衛星携帯電話を「使える」かというとそうではない。数万キロ上空の衛星と電波をやりとりするため、端末が異様なまでに大きい(サービス開始当初の携帯電話くらい)し、何しろコストがかかりすぎるのだ(端末だけで約30万円。基本使用料・通話料ともに)。一般販売されてはいるものの、事実上、特殊なユーザーが緊急時のみ使用するという限定利用の域を出ていない。
今現在、日本でサービスが提供されている衛星携帯電話は次の2種である。
○NTTドコモの「衛星携帯・自動車電話サービス」
NTTドコモが提供しているサービスでは、地上36,000kmにある2つの静止軌道衛星を利用することによって、日本及びその近海をカバーしている。サービス開始は1996年3月。電話の交換ネットワーク自体は、一般に普及しているデジタル携帯電話(PDC)と共通化しており、無線部分のみ衛星を利用している。よって基本的にはNTTドコモ製PDCと衛星との通信を確立させる端末(小型ノートパソコンくらいの大きさ。結構重い。)を組み合わせて使用する(デュアルモード)。これは、衛星が伝送できるトラヒック容量が少ないため、原則としてPDCのエリアをはずれ、衛星だけしか利用できない場合のみ、衛星に接続するようにせざるを得ないからだ。ただ、PDCのサービスエリアに関わらず衛星モードで使えるシングルモードサービスもある。
最初にも述べたが、この衛星携帯・自動車電話は日本国内でしか使うことができない。さらに、NTTドコモの衛星携帯・自動車電話はデュアルモードでも通話中に衛星利用←→PDC利用の切り替えはできない。使うときはどちらかの電波を捕まえて、切れるまではそれを使うようになっている。また、静止衛星を利用するため、衛星放送と同様にアンテナを衛星の方向へ向けていないと利用できないので注意が必要。
○日本イリジウムの「イリジウム衛星携帯電話サービス」
こちらのイリジウムサービスは地球上に6つの軌道を設けて各期道に11個の衛星を打ち上げ、トータル66個の低軌道衛星を利用したシステム。1998年12月にスタートした。宣伝のうたい文句にもあるとおり、サービスエリアは地球全域(ただし法規制で利用不可能な国や地域がある)。提供している端末の種類として、衛星との通信のみで利用するシングルモード端末、既存のPDC携帯電話(IDO又はセルラー)と組み合わせて利用するデュアルモード端末、そして、ページャ(ポケットベル)がある。
こちらのシステムは衛星が常に移動しているため、通話中に電話機上空にある衛星が移動してしまった場合は、自動的に次の衛星に通話路を切り替える構造になっている。よって、NTTドコモのようにアンテナを常に衛星の方向に向けている必要はなく、一般の携帯電話と同じような使い方ができる。また、提供している端末もシングル・デュアル共にNTTドコモの物よりは小さく、バッグに入れれば十分に携帯できる大きさ(・・・とはいえ、1.5〜2lペットボトルクラスの大きさと重さですが)であり、ページャに至っては、ほぼ既存のポケットベルと同サイズである。
衛星携帯電話自体、確かに優れたシステムではあるし、自称携帯廃人への道を少しずつ歩みつつある僕(汗)としてはのどから手が出るほど欲しいですねぇ。いつかお金持ちになったら、人々が行き交う町中で、ポケットから(←ここ大事)1.5lペットボトルサイズの衛星携帯電話をおもむろに出して「もしもしぃ?」ってやりたいなぁ(お間抜け)。
参考文献
村田嘉利 中川純一「移動体データ通信がわかる本」/毎日コミュニケーションズ/1999
「日本イリジウム」
http://www.iridium.co.jp/
「multimedia ON LINE Dictionaly」
http://www.cgarts.or.jp/dictionary/
「みかかの鉄人」
http://www.first.tsukuba.ac.jp/ipu/users/urat/mikaka/
担当:石橋 晃 |