メディア論(担当:鈴木克明)99.4.22.
グループ作品「メディア論重要キーワード5解説」内容の例


キーワード1:NTSC(エヌティーエスシー)



定義:

(1)アメリカの全国テレビ方式委員会(National Television System Committee)が組織名称をそのまま規格名称として提出して1953年12月に連邦通信委員会FCCが承認した、走査線525本、毎秒画数30枚、音声FM波,白黒テレビとのコンパチブル方式の規格。(2)戦後日本がアメリカ大衆文化を受容することを促進したテレビ方式。ヨーロッパのテレビ関係者がNever The Same Colorの略であると揶揄する環太平洋地域で採用されているアメリカ生まれのテレビ送信方式。

解説:

 現在われわれが,何も意識しないで毎日見ているテレビであるが,世界に目を転じれば,3つの方式が混在している。当時,アメリカの強い影響下にあった日本では,1960年9月からNTSC方式が採用され,現在にいたっている。したがって,日本で録画したビデオは,PAL(西ドイツ方式)や SECAM(フランス方式)を採用しているヨーロッパやアフリカ諸国では,そのまま見ることはできない。日本がNTSC方式を採用したことにより,テレビ普及期に,いち早くアメリカのテレビ番組が日本でも放映され,日本の「アメリカ化」に一役買っていたとの指摘もある。受像機の中に色の自動調整機能を有するPAL方式を用いているヨーロッパ諸国の放送関係者の中には,アメリカ文化侵略へのいらだちの気持ちを込めて,「NTSCとは見るたびに違う色が出る方式という意味ね(Never The Same Colorの略)」と批判する声もある。それに対してアメリカ人は,SECAMを「Something Essentially Contrary to AMerica(本質的に反アメリカ)」の略だと反撃する。

 現在,放送のデジタル化が進行する中で,HDTV(High Definition TeleVision;高品位テレビ),あるいは次世代テレビの標準化をめぐる国際的な駆け引きがさかんに行われており,歴史が再現されている感がある。日本が開発したMUSE(HiVision)方式は,走査線が1125本,画面比9:15のアナログ規格であり,次世代テレビ標準の一つに含まれることにはなったものの,世界標準になる道は事実上,閉ざされた。2000年12月頃に始まる予定のBSデジタル放送では,ハイビジョン並の高品位テレビがデジタル規格で採用され,現行のMUSE方式の受信機は,受信アダプタによる対応となる。

参考文献:

 リンクス,W(山本訳)(1962)『第五の壁 テレビ〜付・テレビに関する諸資料〜』創元新社

(担当:鈴木克明)