[05]教育システム情報学会全国大会@香川大学 参加記録
ヒゲ講師は、8月20-22日香川大学にいた。教育システム情報学会の第29回全国大会が開催された。大会初日にeラーニング技術特別委員会(委員長:小松秀圀副会長)主催のシンポジウムに例によって、コーディネータとして登壇した。また、関係者3名が研究発表した(例によって、ヒゲ講師は発表せずに、連名発表者)。この際だから、というわけで、1日早く高松入りして、四国を牛耳る電力会社の教育部門で働くO氏(eLF2003修了者)を訪ね、心地よい酒に酔いしれた(注:しっかりインタビューはした。その結果は、eLF続編で活かされる予定)。四国出張も滑り出し順調というわけで、初めてこの学会の全国大会に「まじめに」参加した。(注:昨年も同じようなシンポジウムが開催され、同じようにコーディネータで参加したが、その夜にヒゲ講師は当地を離れ、全国大会にまじめに出席したのは今年が初めてであった)。結果は、うーん、ちょっと待ってよ、だった。
うーん、ちょっと待ってよ、というのは、何か、といえば、学会発表の分かりにくさ、発表者のやる気のなさ(ヒゲ講師がそう感じただけかもしれない)、質疑応答の鋭くなさ。せっかく聞きに来ているんだから、もう少しいろいろ教えてよ、という感じの発表が結構多かった。大学人は発表が下手なのか、たまたま入った部屋が不運だったのか(並行セッションが何部屋もあって、どれを聞きにいくか選ぶのが大変)。
たまたま同じ時期に、同じ学会の学会誌編集委員会から編集後記なるものを頼まれていた(注:ヒゲ講師=編集委員)。ついつい、思ったことを素直に書いてしまった。これが読者の元に届いて、どういった反応が返ってくるのか(あるいは無視されるのか)、原稿を送ってしまったあとで、少し気にしている。人間誰しも敵を作るべきではないし、平穏無事が一番。しかし、ついつい口が滑って(筆が滑って)、余計なことを書いてしまうのです。ヒゲ講師がまだ「若気の至り」の歳だからか、それとも未熟が故か。あまり成熟して八方美人にはなりたくないし。なかなか難しいですね、世の中。
まだ学会誌に掲載されてもいない時期に、読者には先行してお届けします。これもばれたら問題になるかもしれませんが。
気の合う研究仲間で訳して、おまけに丁寧な解説までつけてしまって、さらに「原稿料は要らないから安く出してね」とお願いして出版した「教育工学を始めよう」(北大路書房、2002年)という本がある。研究の品質を上げるためにアメリカ教育工学会が無償でホームページで公開している文章だ。みんなこれを読んでから学会発表しましょうね、とまで筆が滑らなかったことがせめてもの救いかな。
そんなこんなで、ヒゲ講師の夏2004は終わりました。もう少しで後期が始まります。その前に、日本教育工学会全国大会@東工大です。ヒゲ講師は高松と同じ思いを抱くのでしょうか、乞うご期待(日程が許せば、ご自身で確かめてください)。初日の日韓合同セッションコーディネータをはじめ、毎日関係者の発表の連名発表者になります(またか!)。毎日、本ML関係者に出会って、美酒が飲めますように。
(ヒゲ講師記す)
------そのうち某学会誌に掲載予定(それまでは秘密です)-----
投稿者 labra12 : 2004年09月21日 21:08
コメント
投稿者 ひげ講師 : 2005年04月22日 11:44
秘密なので、ここで切ったのでしょう。本人から公開しておきます。---
編集後記
本学会誌に掲載される論文は質量ともに毎年充実してきた感がある。編集委員をやりながら一度も本誌に投稿したことがない一研究者の実感として、そう思う。教育の実践に役立つ研究成果という視点で貫かれた授業実践、システム開発、あるいは基礎的研究の数々に接するのは、楽しい。それをどうすればもう少し読者に分かりやすく、研究成果をはっきりと伝えることができるか、あるいは何を付け加えるともっと良い論文になるのかなどを考えて、「採録の条件」や「参考意見」にまとめていく作業には、緊張感と充実感がある。査読の結果、掲載される論文が良いものになっているという実感が、編集作業の緊張感をねぎらい、編集委員としての充実感を支えている。
その一方で、今年初めて全日程を参加した全国大会で拝聴した研究発表の質の低さには驚いた。研究が何を目指したものであったのかが曖昧なもの、どんな手法で研究を進めたのかが伝わりにくいもの、結論として何が言いたいのか(何が分かったのか)が良く分からないもの。「このまま研究を進めれば、学会誌に投稿できますね」と言えるものの割合はどの程度であっただろうか。あまり多かったという印象は残っていない。数多い並行セッションがあったので、「セッション選択運」が悪かっただけかもしれないが。
海外の学会の年次大会では当たり前の口頭発表予稿に対する査読が日本の学会発表にはない。だからといって、学会発表と学会論文との間に存在する超えがたい溝の深さには、呆然と立ち尽くすしかないのだろうか。あるいは単に、その差は日本人(研究者)のプレゼンテーション技法の貧疎さに起因するものであり、研究の質が低いのではないと言える現象だったのだろうか。学会発表予稿の2ページに凝縮された研究の経緯を査読者の目でじっくりと読み直してみれば、その答えは出るのだろう。
学会発表の質を上げるためには、学会発表を学会誌投稿の一里塚として位置づけることである。学会発表で満足せず、いつかはこれをまとめて学会誌に投稿するぞ、と目標を定める。学会発表の質が向上するという成果とともに、投稿数の増加と掲載論文の更なる充実が、その結果として得られることを期待したい。
鈴木克明(岩手県立大学)