Chapter9 Growing and Sustaining an Independent Learning
(第9章 独学カルチャーの成長と維持)

担当:下 徹太郎

ビジネスの環境が変化すれば、従業員の学習要件も変化してゆく。今日のグローバル化された経済下において、競争力を維持できる資源は知的資本と従業員の知識と技術であり、独学文化の成長と維持は欠かせない。本章は、下記のチェックリストをもとに前章まで述べてきたISDLへの提案を集約し拡張する。

■ISDLを成功と失敗に分ける3つの要素

1. 会社は従業員に新しいISDLの方法を用いてスタートすることを助けなければならない。
2. 会社は従業員各々の知識・スキルをお互いに共有できるように学習することを援助しなければならない。
3. 会社は評価と報酬を、新しい学習方法に合わせ調整しなければならない。


●GETTING ISDL OFF THE GROUND (ISDLの発足)

前章までに述べられていたもの以外に残されている必要不可欠な要素

1. 従業員は彼ら自身が利用できる学習資源を知らなければならない。
2. 従業員はそれらの(利用できる)学習資源を容易に入手する方法を得なければならない。
3. 従業員はこれらの学習資源を即座に利用できる道具を持つべきであり、またその道具の使用法を知るべきである。
4. 従業員は必要とされる学習を着手するために必要な時間を得なければならない。
5. 従業員はお互いの学習を助け合う意思を持つべきである。

■Publicizing ISDL (ISDLの告知)■

□ ISDLの売り込みなさい
□ CBTで従業員をスタートさせなさい
□ 特別な広報宣伝資材の作成しなさい
□ 動機付けを与えなさい
□ 成功体験談の公表しなさい

■Learning to Use ISDL (ISDLを使用するための学習)■

□ 基礎を教えなさい
□ 研究会を形成しなさい
□ 全員のコンピュータスキルが標準レベルに足しているかどうか確かめなさい

■Making the Tools Available (道具を利用できるようにすること)■

□ ハードウェアとソフトウェアの有用度と性能を評価しなさい
□ PC貸付プログラムの検討しなさい
□ 従業員に対するコンピュータの無利息ローンの検討しなさい
□ 代替形式でもトレーニング方法を創造しなさい

■Making Time for Learning(学習のための時間を割くこと)■

□ 職務内容に学習の役割を設けなさい
□ 必要な学習時間を決定しなさい
□ 学習時間を割り当てなさい
□ 学習スケジュールの取り決めなさい
□ 学習のための空間をつくりなさい
□ 学習のための時間をつくりなさい


●HELPING EACH OTHER LEARN (お互いの学習を助け合うこと)

■学習を共有するためにオープンにすることの奨励■

・ ISDLの移行は組織において従業員が一人一人単独で学習するということを意味しているわけではない。
・ 事実、毎日の業務中に行われる学習の殆どは、それが組織的に体系化された方法であろうとなかろうと、同僚との知識の共有に依拠している。あらゆる場面で、他人の援助の上に学習をしているわけであり、自分の知識を他者と共有することに異議はないだろう。
・ 会社において知識を共有するための寛大な態度は、ISDLへの移行を成功させるための基礎的な必要前提条件である。

□ "cheating"(*)に対する精神を変えなさい
□ 学習のために人々を集めなさい
□ 知識を共有する行動者としてのモデルになりなさい
□ 自己管理へ、高いパフォーマンスの組織へ移行しなさい
□ 組織的な文化として根付くための変化の時間を与えなさい

(*)cheatingとはいわゆるカンニングのことであるが、ここでは「他人のものを見ること」を良しとしない既存の文化によって横行してきた精神のことを指す。つまり、知識を一人で占有するのではなく、他者とさまざまなことを共有しあい、学び会うことを良しとするような精神に変化させることを意味している。


●Aligning Measurements and Rewards with ISDL (評価と報酬を、ISDLに合わせ調整すること)

□ 従業員に対する学習規約を使用しなさい
□ 学習を共有する人に報奨を与えなさい
□ 管理者がISDLや知識ネットワークをよく育成しているかをうまく評価しなさい
□ 自分の仕事にISDLを応用している人を承認しなさい
□ ナレッジネットワークのユーザーを奨励しなさい
□ 問題を未然に防ぐ働きに報酬をあたえなさい


●Growing And Managing An Independent Learning Culture(独学文化の育成と運営)

・ すべての企業教育をISDLの形式にすることはできない。
・ 今日の見積もり→70%の企業研修が教室で行われており、残りの30%のほとんどがISDLの形式。次の10年には50:50になると予見。
・ 従来のインストラクター主導のコースとISDLがうまく混合されることが望ましい。
・ 今日のグローバルな経済の下では、会社の知的資本、組織の知識と技術、またその従業員そのものが、唯一の継続的な競争力のある資源である。


●Keeping Organization Focused On INDEPENDENT LEARNING(独学を柱とする組織を維持すること)

・ 学習活動自体が会社の業務目標に貢献できる中心(的役割)になれば、会社が学習に焦点を定めることを継続するのは容易になる。
・ 多くの会社では、たとえCEOが学習に対し明敏に焦点を当て続けているとしても、会社のすべてのレベルの管理者までその関心が拡張しているとは限らない。学習に対するリーダーシップがISDLの成功には欠かせないのだ。
・ 筆者は研修プログラムに対する費用対効果計算やスマイルシートの使用に対し反論してきた。
・ もし会社が成功しており、会社のリーダー(経営者)が「もし教育部門の努力がなければ、成功しなかったであろう」ということに気づいた、ということが分かれば、その教育組織は成功してきたことになる。→これが測定・指標になる
・ ISDLが学習戦略の一部になり、リーダーがPLEを構築し維持できているような成功している会社では、学習が自ずと維持される。


■ LEARNING ASSIGNMENT (課題)■

根本的に、この章のすべてが学習課題でした。(本章で見てきた)チェックリストは、あなたの会社がISDLへの移行を成功させるためのタスクを強調しています。チェックリストを再度見直しあなたの会社が今まで行ってきたことを評価し、どのタスクが未だに残されているかを見つけて下さい。そしてまた以下の項目を検討してください。

・ISDLを促進することで、あなたの組織はいかに効果的になるでしょうか?
・従業員の間で知識をシェア・共有することをいかに奨励しますか?またどのように「ごまかし」の精神・メンタリティーを取り除きますか?
・どのように、知識を共有している人たち、職場で彼らの学習を応用している人たち、そして最も大切な人々、それは火を消す人(消防士?)ではなく、火事を防ごうとする人たち(防火士?)に報酬を与えますか?


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