Instructional-Design Theories and Models Vol.2
インストラクショナルデザイン 理論とモデル2
出典:C.M.Reigeluth."Guidance for Scope and Sequence Decisions (Chapter 18)". In C. M. Reigeluth (Ed.). [Instructional-Design Theories and Models Vol.2]: A New Paradigm of Instructional Theory. LEA.
第18章 精緻化理論:スコープとシーケンスの判断のためのガイダンス
(Chapter18 Guidence for Scope and Sequence Decisions)
担当者:小野 幸子(岩手県立大学大学院・学生)g231z005@edu.soft.iwate-pu.ac.jp
■目次■ 1-1. グルーピング(分類)をして順序立てしましょう2-1. トピカルシーケンシング
2-2. スパイラルシーケンシング3-1. タスク専門知識(Task Expertise)
3-2. 専門知識(Domain Expertise)3-2-1. 概念的精緻化シーケンス(Conceptual Elaboration Sequence)3-3. SCM(Simplifying Conditions Method):条件単純化法
3-2-2. 理論的精緻化シーケンス(Theoretical Elaboration Sequence)
■Goals:目標■ この理論の目標は、中間から複雑な種類の認識と精神運動性の内容について、選択しシーケンシング(系列化)することを助けることである。
この理論は、学習者が特定のタスクの専門家になることを想定したタスク専門知識(Task Expertise)と学習者が特殊な内容の専門家になることを想定した
領域専門知識(Domain Expertise)の区別によって、教授方法の決定を助けます。
■1. シーケンシング(系列化)するために■ 1-1. グルーピング(分類)をして順序立てしましょう
−グルーピングなしでシーケンシングはできません
=それぞれのグループがどんな内容なのか見極める内容の本質:Scope
内容の関係性:Sequencing
学習単元それぞれの内容のサイズ
それぞれの“学習単元”の構成要素
各学習単元の中における構成要素の順番
そして、単元の順番(全体
これら全ては、学習経験の質に影響を与える:
□effectiveness: 効果 □Efficiency: 効率 □Appeal: 魅力
■2. シーケンシング(系列化)方略の種類■
2-1. トピカルシーケンシング
1つのトピック(またはタスク)が終了するまで、次には進まない。
- 長所:学習者がやたらと新しいものにスキップすることなく、1つのトピックに徹底的に集中できる。
- 短所:クラスごとに新しいトピックに移ると、最初のトピックは忘れられることが多い。学習者は最後まで行かないと、全体の理解ができない。
■短所を補う■
トピカルシーケンシングの弱点は、概観、再検討および合成のためのインストラクションの方策を組み合わせることによって補うことができる。
2-2. スパイラルシーケンシング
1つのトピック(またはタスク)の基本を学び、そのトピックをさらに学習する前に、次のトピック、また次と言うように進める。そして、全てのトピックについて必要な深さ、広さに至るまで、このパターンを続ける。
- 長所:各トピック間の相互関係の学習を容易にします。なぜなら、様々なトピックの同じような側面がやがて互いに接近して学習されることを可能にします。さらに、より初期のトピックを学習するために回帰することは、初期のものを再検討することを提供する。
- 短所:スパイラルシーケンシング最大の欠点は「混乱」。たびたびトピックが変わることは、学習者の混乱につながる。
■3. 精緻化シーケンス■ インストラクションの精緻化理論は、部分から全体へのシーケンシングと、表面的な範囲の内容の全体的な選択肢を提供するために開発されました。
これまで1つの枠組みで、様々なシーケンシングを合成する試みがなされてきた。
・ 認知と精神運動の領域のみで、感情領域については対処しない。
・ シーケンシングは、コンテンツ内の関係性の種類に基づき、その関係性は、専門性の種類による。
−学習をもっとも助けるシーケンシングは、開発したい専門性の種類によって変わる。
精緻化理論は、タスクの専門知識と領域の専門知識を区別して扱う。
3-1. タスク専門知識(Task Expertise)
学習者が特定のタスクの専門家になることに関係する学習の場合
例:プロジェクトを管理する、商品を販売する、年間計画を書く、等
タスクを単純なものから複雑なものへと並べる。
(精緻化理論は難しいものへと進んでいく)認識と精神運動に関するタスクは、状況によってタスクも異なるという考えに基づき、それぞれの状況によって異なったバージョンのタスクが定義される。
(ここでは感情領域は対象としない)
→SCM(Simplifying Conditions Method)を提案→3-2. SCM 条件単純化法 参照
最も単純な実際(現実の)タスクにはじまり、単純なものから複雑なものへ並べるので、だんだん複雑になるタスクをそれぞれマスターできる。
■タスクの種類複雑なタスクはみんな同じ性質というわけではなく、主に次のタイプがあります。
- 手続型(procedural) :ステップを利用する(use a set of steps)
このタスクの専門家は、精神的そして(または)身体的な1セットのステップを利用して、いつ何をやるかを決める。
例:高校の数学のコース、顧客向けに1つの設備を設置する企業トレーニングプログラム
(運動技能に近い=手順)
- 発見型(heuristic) :因果関係モデルを利用する (use causal model)
このタスクの専門家は、原理や(または)ガイドラインのセットと相互関係にある、
因果関係のモデル(causal models)を利用する。
例:高校の思考能力のコース、マネージメントスキルの企業トレーニングプログラム
(知的技能に近い)
FIG.18.2. 水の循環に関係する因果モデルの部分的な例
3-2. 専門知識(Domain Expertise)
−特定のタスクに限らず、その領域の専門家になることに関係する
例:経済学、電子工学、物理学、等(しばしば多くのタスクとも関係する)
3-2-1. 概念的精緻化シーケンス Conceptual Elaboration Sequence
まだ学習していない最も広範囲で、包括的で、概略の概念を教えることから始まり、続いて狭い範囲であまり包括的でなく、より詳しい概念について必要な詳細レベルまで進めます。
例えばこの種類のシーケンスは、動物や植物の学習に興味のある高校生や、会社が販売する設備のについての学習に興味のある従業員に向いています。
FIG18.3. 概念構造の例
・ クラシック音楽は、音楽の下位に置かれる
・ クラシック音楽は、中世音楽と同等に置かれる
・ 種類の種類の種類(部分の部分の部分)というようにさらに下がっていくと、概念はだんだん細かく、詳しくなっていく。
※クリックすると拡大した図が見られます
3-2-2. 理論的精緻化シーケンス Theoretical Elaboration Sequence
たくさんの法則に関わる学習が必要な目標のときは、このアプローチを使います。
上位の法則を教え、下位の法則を教える前に包括的な法則を教えてから、さらに詳細の法則を教えます。その際、扱う内容(原理、手順、情報、より高度な思考技術、心構え、など)に、最も近い原理と一緒に教えます。
例えば、遺伝の原理・生活環(ライフサイクル)・身体機能に焦点をあてた高校の生物の学習や、ある1つの設備に関する仕事が「どのように」、「なぜ」行われるか、という企業内トレーニングのプログラムに向いています。(その設備の使い方ではない)
FIG.18.4. 理論的構成の例
3-3. SCM(Simplifying Conditions Method):条件単純化法
タスク専門知識(Task Expertise)を構築するための手法の1つ →3-1. タスク専門知識 参照
- 特 徴
- この理論は、中位以上の複雑さを持つ、認知と精神運動についての学習のために設計された
- 単純−複雑(simple to complex)シーケンシング、学習の必要条件シーケンシング、要約するもの、合成するもの、類似性、認知戦略実践、そして学習者制御も含め、この理論にはそれぞれ鍵となる要素がある ※様々な理論からの要素が組み合わさっている
- タスク全体にわたり、必要条件とされている代表的(一般的)なタスクの、最も単純なバージョンから始める
- この単純なバージョンは、複雑なタスクの特性をさらに具体化する
- 学習者は、どのように単純なタスクをこなすか学習し、現実の世界のタスクが学習されるまで(要求される複雑さのレベルまで)、より複雑なタスクへ進みます。
- また、もう1つSCMの主な特徴は、概略(略図)、概念の最も基礎・基本的な考え、原理または手順、そしてインストラクション全体に渡る概略(略図)の精緻化を利用した、インストラクションの導入を含むということ。
- 概略(略図)には次のものを含む:
- タスクを個々のスキルまで掘り下げるのではなく、全体的に捉えたバージョン
- より簡単なバージョン
- 偏りのない共通のバージョン
FIG. 18.5. 階層的アプローチとSCMアプローチ(ライゲルース、キム 1993)
※このプロセスは、すべての必要条件を最初に扱い、実務のタスクは最後まで教えないという階層的アプローチとは対照的である
- 学習者に、そのタスクを実行するために必要とされる基礎的な要素をすべて含んでいるタスクの最も単純な典型的な例が示される
- 学習者が最も単純なバージョンをマスターした後、学習者は次第により複雑なバージョンに導かれる
■関連リンク集■
タイトル / URL 備 考 Charles M. Reigeluth(英語)
http://php.indiana.edu/ipu/users/reigelut/著者 ライゲルースのサイト
1997年4月15日最終更新
部分的にリンク切れ等ありElaboration Theory(英語)
http://www.personal.psu.edu/users/h/x/hxk208/INSYS525/K_base1.htm精緻化理論について概要をまとめたサイト
その他にもInstructional Transaction TheoryなどIDについてのリンクありElaboration Theory(英語)
http://www.soe.ecu.edu/ltdi/colaric/KB/ElaborationTheory.htmlこの輪読と同じく、GreenBook2から18章の精緻化理論について概要をまとめたサイト
その他にもARCSなどID理論についてのページあり
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by Sachiko Ono, Graduate School of Software and Information Science, Iwate Prefectural University.
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