GREEN BOOK 2:
Charles M. Reigeluth (1999). INSTRUCTIONAL-DESIGN THEORIES AND MODELS Volume 2 A New Paradigm of Instructional Theory. LEA.

2004.02.10
 2362003003 下 徹太郎
Chapter10:Designing Constructivist Learning Environments
David Jonassen

第10章 構成主義的学習環境の設計 


概要

この理論の主要な目的は問題解決および概念構築を促進することである。内容領域の構造があいまいな領域(Ill-defined or Ill-structured domain)のために意図されている。学習は以前に教えられた概念や原理の例示としての活動なのではなく、むしろ問題が学習に駆り立てるという前提に立ち、取り組むべき問題の提示からその問題を理解し、解決していくための環境を構成する。


Model For Designing Constructivist Learning Environments
構成主義的学習環境設計の理論



1. Question / Case /Problem / Project (質問/事例/問題/プロジェクト)

ill-structured problem:構造化されにくい問題(p.219)

述べられていない(不明瞭な)目標があり、また制約がある。
多様な解決法、解決の進路、経路を含んでいる。 (あるいはまったく解決法がないということも)
解決法の評価のための多様な指標を含んでいる。
どの概念、ルール、原理が解決法に必要か、またこれらがどのように組織化されているかについての不確実性を提示している。
一般的な規則や、記述したり、結果を予測するための原理がほとんどのケースで与えられていない
学習者は問題についての判断がもとめられ、また個人的な意見や信念を表現することにより、その判断を主張することが要求される。
「良く構造化された内容領域」(Well-defined domain)との比較
知的技能の学習課題に用いられる構造分析などがしにくい、あるいは非常に複雑になるような問題・領域。
「一歩ずつ学習を進行していくことを否定し、より混沌とした問題解決場面に「いきなり」直面させ、その困難を乗り切る手段として基礎技能を学ぶことが意味のある学習だ、と考える立場が近年、強調されるようになった。いわゆる構成主義の立場である。」鈴木 「eラーニングファンダメンタル」 テキスト 8章 P.11 (2003)より


How Can You Identify Problems for CLEs?(P.220)  CLEsのためいかに問題を定義付け得るか?

研究分野のトピックそのものではなく、その分野の専門家・熟練者(Practitioners )が実際に問題解決の際で何をしているのか?を問うてみること。実経験者としての熟練者のように効果的かつ洗練された解決法を生み出すことをゴールとして想定するのではなく、むしろ、その分野で実際に実践しているコミュニティ内のメンバーであるかのように考えることによって学習をすること。
テキスト内の問題・課題・争点の例示(テキストP.220)
政治学:新興の第三世界における民主主義のために、住民の社会的、文化的、政治的、歴史的な特徴と、周辺地域の他の国々との関係性を、調和がとれたかたちで実行可能な制度を構築すること
哲学:尊厳死の権利や同性愛者の結婚など倫理的ジレンマに決断を下すこと
科学:新しい下水処理場に適合するその地域の小河川を決定すること


1.1. Problem Context 問題の文脈

問題の表象において、必須の部分はその問題が起こっている背景、状況の記述である。
同じ問題でも、社会的文脈が違えば異なる。CLEsでは問題の周囲にある、すべての状況の事実の説明を記述しなければならない。

Performance Environment 遂行環境

問題を取り巻く環境、背景、物理的、組織的、社会―文化的なものなどを記述すること。この情報は問題を理解するために、学習者に利用できるようにされるべきである。

Community of Practitioners / Performers / Stakeholders(関係者)


近代化に伴う、宗教的な道徳規範の瓦解、価値観の多様化。消費社会の到来による欲望の肥大化。社会的な規範を遵守するようなパーソナリティから私的な欲求を満たすようなそれへとシフトし、同姓愛の権利を主張する動きが高まるにつれ、あらゆる差別を撤回せよと婚姻の権利とその制度化にまで及んでいる。 冷戦終結における、社会秩序の流動化。経済のグローバル化などによる急激な民主化傾向


1.2. Problem Representation / Simulation (問題の表象/シミュレーション)

問題のrepresentation(説明?・表出?・表現?)は学習者の引き受ける姿勢に対して重要である。興味深く、魅惑的で学習者を引き付けるように提示すること

Authentic(真正の課題)

バンタービルトの認知工学のグループによる、学習者をひきつけ問題を紹介するための、高品質のビデオ教材を製作。教科における問題をより現実に即した物語形式にする。
物語は問題を表現し、目標ベースのシナリオをコーチングするのに、原理的な手段である。問題を自然な文脈にシミュレートし、伝達するため手段。
鈴木克明(1995b)「教室学習文脈へのリアリティ付与について―ジャスパープロジェクトを例に―」『教育メディア研究』2(1) 13 - 27


「あなたの友人が突然ゲイであることをカミングアウトしました。そして同性愛者の結婚は人間としての当然の権利だと主張し、友人はあなたにその是非を問うてきました。あなたならなんと答えますか?根拠となる社会的事実や理論を提示しながら、その是非を答えなさい。」 「あなたはまだ民主化されていない国に住んでおり、専制的な君主の圧制に苦しんでいる市民であると仮定します。あなたはそこでこの圧制からの解放を望み、なんとか民主化を果たしたいと考え、先進国に倣い民主的な制度を構築しようとしています。民主的な社会制度の構築を成功させなさい。」


1.3. Problem Manipulation Space 問題を操作する空間

学習者に環境を操作するために必要とされる、道具、合図、目的を提供する。有意義な方法で問題の状況に作用できるということを知ることなしに、学習者は問題の所有者としての役割を担うことができない。実世界の課題環境の物理的なシミュレーションを提供すべきであり、実験を行いその結果を即座にフィードバックされる環境。
Phenomenariaや、ミクロコスモスは、単純化されたモデルを表す。
テキスト内の例示(テキストP.222)
政治学:もし社会制度を構築したら、社会的、政治的、軍事的に、それぞれの項目を含んだものとして、反映された結果を示す。
哲学:(尊厳死などの)倫理的決断が実際の訴訟事件としての裁判事例で試される。
科学:汚染物質の影響と洗浄活動の効果を視覚的に表現される小川のモデルが作成される


人口の5割は実はゲイであり、同性愛者の結婚を社会的に認めた場合、社会はいったいどうなるのかをシミュレートできるような環境を与える。また想定される結果を提示させ、是非の判断材料とさせる。 社会的、政治的、軍事的に、制度構築に伴う結果を考え、シミュレートさせる。「近代国家として成立させる条件としては軍事力が必要である」と考えればそれに伴う結果、隣国との関係などを考慮し、考えられる結果を提示させる。

2. Related Cases 関連した事例

問題を理解するには経験が必要。経験知は決定的なので、初心者も参照できるような、関連する経験知を代理できるような環境が必要である。

Scaffold Student Memory : Case Based Reasoning 学習者の記憶の足場組み:事例に基づく推論


事例に基づく推論により人間の知識は経験や出来事について物語として符号化される。
例)制度構築の例、他の国で社会的、政治的な結果から起こった民主主義について、その結果を踏まえた新聞記事、ビデオの映像などの例を示すこと。
例)医学生の薬の注入の例:薬剤の注入の新しい事例に取り組む医学生によってアクセスされる関連したケースを提供した。

Enhance Cognitive Flexibility 認知的柔軟性の強化

類似する倫理的難問を異なる分岐する個人的な解釈や視点を同時に提供する
→比較することによって、学習者が独自の解釈を構築することを支援
例)類似する倫理的課題→妊娠中絶の是非を提示
カトリック諸国、リベラルな視点などを比較させる。
・妊娠中絶の是非についての例
宗教的なレギュレートが機能している(とされる)カトリック諸国と、リベラルな国々との比較などによって、異なる立場での解釈の差などを示す。
・中国の例
・ミャンマーの例
など、実際の世界で起きている例を新聞記事やビデオなどで示す。

3. Information Resources 情報資源

問題を理解するためには学習者がどのような情報が必要となるかを決定し、それに対する豊かな情報を提示すること。情報が問題や応用において意味を作り出す。また知りたい情報が即座に入手できるようにするべきである。
例:インターネットにアクセスできる環境構築、また即座にアクセス可能なために関連するサイトへのリンクなど
All About Japan>ゲイライフのサイト
http://allabout.co.jp/relationship/homosexual/subject/msubsub_KIJI-LIFE.htm
ゲイコミュニティのためのサイト
http://www.badi.jp/
レズビアン・ゲイについてのブックガイド
http://www.pot.co.jp/lesbiangaybg2002/study.html
インターネットにアクセス可能な環境構築
リンク集の提示など

4. Cognitive (Knowledge-Construction) Tools 認知の(知識構築の)道具

4.1 Problem / Task Representation Tools 問題/課題表象・表現ツール

問題、関連事項の視覚化、また課題達成支援のツールを提供すること
現象を理解するためには、そのメンタルなイメージを生成することが殆どの人間にとって必要なことである。視覚化の道具は学習者に心的イメージと活動を視覚化することを構成するのを助ける。
例:現在のパーソナルコンピュータのOSで用いられるGUIは、ファイルやアプリケーションが操作されることを視覚的に表現・描写している。

4.2 Static and Dynamic Knowledge Modeling Tools  静的および動的な知識モデルのツール

モデリングツールは、”自分が何を知っているのか?”、また”それは何を意味すのか?”という質問を答えるのを支援する。CLEの設計者として、いつ学習者が知っている事を関連付ける必要があるのか、またどの形式が学習者の理解を支援するのに最適かを、決定すべきである。
システムの動的な関係を表現するために、システムのシミュレーションとして学習者はダイナミックなモデリングツールを使用することができる。

例:STELLAというツールを使用し、環境問題の認識構築を促す
http://www2.toyo.ac.jp/ipu/users/mikeda/2003/ikeda-sd-001.html

Performance Support Tools 遂行支援ツール

過剰な計算など認識の負担を軽減するツール
例:自動計算ツールを学習環境に組み込む

Information Gathering Tools 情報集約ツール

情報を検索するプロセスは、学習者を主要なゴールと問題解決からかき乱してしまう。
検索ツール埋め込む事は学習を容易にする(促す)。Web検索できる環境を埋め込むなどの例。
発想法などを用いた事実と推論の関係を図示できるツールの使用
アンケートなどによる量的なデータを用いる場合の統計ツールの使用
発想法などを用いた事実と推論の関係を図示できるツールの使用
アンケートなどによる量的なデータを用いる場合の統計ツールの使用

5. Conversation and Collaboration Tools 会話と協調作業のツール

学習はほとんどの場合、問題解決を一人ではなく、集団で他社と一緒に作業する中で自然に起こる。
問題自体はグループの間で共有される概念が開発される時に解決されるのであり、それを促す湯女知識共有の提供するべき。
CSILE(Computer-Supported Intentional Learning Environment)
「学習者グループが自分たちの互いに矛盾するアイディアを編集して、データベースとして共有し、議論ノートを使った議論を通じて改良していくプロセスを支援する。講義ノートにおいては、自己申告で発言のカテゴリー(推測、理解、できていないところ、理解のための新しい情報など)のラベルを付与する。システムは、説明の探求、理論づくり、問題解決、論拠、出版などのメニューで社会的認知活動を支援する。」(教育工学事典 2000 p.435より)
CLEsはグループの参加者の協調コラボレーションを支援し、環境をいかに操作するかについての意思決定を共有し、トピックや問題についての他の解釈、学習者のアイディアの接合や、彼らが用いた過程を振り返る(リフレクション)ことを共有する。 問題解決におけるコラボレーションは共有された意思決定が要求される。それは合意を形成する活動を通じ、社会的に共有化された、問題についての知識や理解の構成を進化させるのである。
議論の場を提供している掲示板の構築あるいは既存のものに参加
ゲイのコミュニティの掲示板参加
身近な人への議論への呼びかけ
ディスカッションの促し
同姓愛の結婚の是非をめぐる掲示板
http://www.mainichi.co.jp/life/women/cross-talk/15/iken/yes/men27.html
http://guriuri.com/ranking/bbs.asp?ID=28&TNO=101
第三世界の民主化について議論の場を提供している掲示板の構築、あるいは既存のものに参加
関連しそうな政治学の掲示板などの参加
身近な人への議論への呼びかけ
ディスカッションの促し

6. Social / Contextual Support 社会的/文脈的支援

CLEsの設計や実装において、文脈的要因を引き入れる(適合させる)ことは、重要である。教師やユーザーに対する社会的、あるいは文脈的な支援はCLEs実装の成功に必要不可欠である。

例:CoVis プロジェクト
教師が支援・援助を探すことができるワークショップや会議を後援することによって教師をサポート
そして研究者との合意を確立する。問題が教師によって提起され、同僚の教師やスタッフがそれに答えることができる。
倫理問題の専門家などが集うコミュニティに参加
自分の意見などが言えて、かつ専門家からの適切なフィードバックが得られるような場が望ましい。
政治的な問題を扱うコミュニティに参加。
自分の意見などが言えて、かつ専門家からの適切なフィードバックが得られるような場が望ましい。

Supporting Learning IN CLEs 
CLEsにおける学習支援

A.Modeling モデリング

Model Performance モデル遂行

学習者に望ましい・望まれる行為の例(モデル)を提供。行為の遂行に伴う活動や意思決定を、それぞれ明確に区別して指摘できることは重要であり、学習者が見失っているステップを推論しないで済む。

達成された事例(Worked Example)

問題解決者によっていかに問題が解決されたかという内容を提示。問題スキーマの開発・作成とその例に基づいた違ったタイプの認知を高める。

Articulate Reasoning  推論の関連付け

・判断を下した例を示す。
A.価値観の多様化はますます進み、利己的な遺伝子などのように子孫を残すことが絶対ではないため、自由な人間の権利として同性愛者の結婚は社会制度としても妥当
・B.ますます社会が流動化してゆくことに歯止めをかけるため、また人口の側面では爆発を防ぐ契機になる可能性もあるが、人間の理にはかなっているとは考えずらく、社会的に制度化する必要はない。
・失敗した社会制度(共産主義諸国など)の例を示す。
・ベトナムなどの成功した(?)例などを示す。

B. Coaching コーチング

よいコーチは学習者を動機付け、彼らの行為を分析し、如何に学ぶかフィードバックとアドバイスを与える。そして振り返りと学習したこととの関連付けを誘発する。

Provide Motivational Prompts 動機付けの刺激・ヒントの提供

学習者がすぐに問題に関心を引かない場合、CLEコーチは学習者が関心を引く良い理由を与える必要がある。いったん学習をスタートしたら、(特に問題やプロジェクトの初期段階では)コーチは学習者の集中レベルを高めるべきである。たいてい動機付けの刺激は、一度学習者が問題に関心を引いたとしても、それはすぐに弱められる可能性が高い。とりわけ、困難な課題に対しては新たな断続的な刺激を与える必要がある。

Monitor and Regulate the Learner's Performance 学習者の実行のモニターと管理

コーチングの役割

●ヒントと支援の提供:課題の特別な側面の指示や学習者が見落としてしまった課題を思い出させることなど
●適切な考えを促すこと:イメージがわくような提案、推論させること、他のアイディアの生成、類推の使用、物語を作ること、問題の生成、結果の要約、隠された意味合いを描くことなど
●協調的な活動の使用を促すこと
●関連する事例や特定の情報資源の考慮を促すこと:学習者にアイディアの理解や解釈を支援する
●特定の認知的ツールの使用を促すこと:内在する概念や相互関連を理解したり関連づけることを支援する
●フィードバックを与える事:学習者に彼らの実行の正確さや有効性を知らせるだけでなく、行動と考え方の分析も与える。

Provoke Reflection 振り返りを誘因すること

●学習者に何をしてきたか振り返ること
●学習者が何を仮説として立てたか振り返ること
●学習者がどんな方略を用いたか振り返ること
●学習者がなぜ特定の反応を示し、活動の道具を用いたか説明すること
●学習者にコーチとの議論を要求すること
●学習者に適切な行為を導くような、解決策を要求するパズルを与えること

Perturb Learner's Model 学習者のモデルをかき乱すこと

経験の少ない学習者が問題を表現するために構築したメンタルモデルはたいてい欠陥がある。誤った形で問題解決を行わないように、学習者のモデルをかき乱す必要がある。

●あなたは〜について考えたことある?
●もし〜ならどうなる?
●あなたのモデルは〜を説明する?
●なぜあなたは〜をしたの?
●あなたはどんな結果を期待して〜をしたの?
●もし〜だったらなにが起こっていたはず?
うろたえさせるような質問、あるいは学習者がとった行動を振り返るえることを要求する。調和しない解釈や視点をあたえることにより、今までとは違う反応を引き出すなど。
「あなたの友人が本当に突然ゲイであることをカミングアウトしてきたとしたらどう?違和感を感じるでしょ?それはなぜ?」などのように日常に潜む、無意識的な考え方などをえぐってみる。そしてどのようにしてそれが(明文化はされていなくとも)制度化されてきているかを考えさせ、多様な側面を見つめるように促す。 「もし、あなたがよかれと考えた制度に対して、他の多くの市民から反対の声があがったらなんと答える?」などのような質問を与えてみて、多面的な視点や認識を深めることを促す。

C. Scaffolding 足場組み

・モデリングは専門家、熟練者の遂行に焦点をあてている。
・コーチングは個人的な課題遂行・実行(performance)に焦点を当てている。
これに対し、Scaffolding(足場組み)は実行される課題に内在する性質に焦点を当てている。
*ヴィゴツキーの最近接発達領域(Zone of proximal development)
学習者が一人でできることと、自分より有能な他者の手を借りればできることとの間の領域のことを指しており、有能な他者がうまく学習者の「足場をつくってやる=支援(scaffolding)」することで、その領域は縮まるものと考えられる。

Adjust Task Difficulty 学習者に適応するための課題の難易度の調整

Restructure a Task to Supplant Knowledge 課題に取って代わる課題の再構築

Provide Alternative Assessments 新しい評価の提供

いきなり是非を問うのではかう、まずはゲイの文化を理解することから始めてみようというようなアドバイスを与える。 民主化というような大きな課題ではなく、まずは市民権、選挙権などについてから始めてみよう、などのアドバイスを与える。

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Created on: 2004/02/23
Sorry not to having an English version. Contact: g236b003@edu.soft.iwate-pu.ac.jp